三色のブルーを組み合わせたペンダントヘッドです。
19世紀後期頃製と推測されます。
一色目のブルーは最も印象深いエナメルの、鮮やかなロイヤルブルー。
地金に彫りを入れ、その上からエナメルを施し、地模様を透かして見せる
技法が用いられています。
エナメルを通すと、全体と中央部分とに設けた彫り模様の差が厚手の
柄織物の凹凸のようにも見え、エナメルの青がより深く、表情豊かに目に
映るのです。
エナメル部分の大きさは約4.5cm×3.5cm、同様の作品の中ではかなり大きな
部類に属します。
彫りに加えた変化やエナメルの見せ方は、特徴的な大きさを十分に生かし、
かつこのサイズであるからこそできた工夫なのでしょう。
エナメルの上には、スズランとユリの花束を飾っています。
そこに配されるのが、二色目の、緑味を帯びたターコイズブルーです。
スズランの花言葉は「幸福の再来」「純粋」、ユリは「純潔」や「無垢」。
爽やかなターコイズの色とぴったりの意味を持つ花々をあしらう
ジュエリーには、何かピュアな、愛情深いメッセージが
込められているのかもしれません。
花や葉はエナメル面にぴたりと寄り添いながらも、それぞれには十分な
立体感があります。
ユリの花はイエローゴールド、花びらの縁をくるんと外側にカールさせ、
グリーンゴールドの葉も柔らかく波打ちます。
また両者の表面に異なる模様もつけるという、大変繊細な表現です。
三つ目のブルーは、エナメルと花々をぐるりと囲むアラビア風模様の水色、
他の二色とはまた趣の異なる、明るい色合いです。
異国情緒あふれる柄との相性も良く、主張しすぎることなく華やかさと
上品さを添えるという、完璧なフレームの役割を果たしています。
さらにこの模様が、ネックレスチェーンを通すパーツにまで
描かれていることにもぜひご注目ください。
裏側には針がついており、ブローチとしてもお使いいただけます。
ブローチの針を受けるパーツは、ペンダントヘッドとして着用時に
支障が出ないよう、内側に倒れる作りです。
どの部分を見ても隅々まで手がかけられていて、上質な作品であることが
分かります。
ペンダントヘット用パーツのエナメル模様が少々欠損していますが、
作品全体のクオリティーには影響がない程度と考えます。
年代 1800年代後期
国 ヨーロッパ
素材 ターコイズ エナメル ゴールド
サイズ 約6.8cm×4.5cm(ヘッド用上部パーツ含む)
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