フランス製のペンダントヘッドです。
ブローチとしての着用も可能、1800年代の終わりから、1900年頃に
かけての作品と考えられます。

当時のヨーロッパは、ジュエリーに限らず美術工芸全般において
新しい芸術様式、"アールヌーヴォー" に席捲されていました。
その作品の多くは主に自然を題材にした、流れるような美しい
ラインを特徴とするものです。

こちらのペンダントヘッドもまた、アールヌーヴォーの特徴を
集約したようなデザインといえます。
リボンでしょうか、シルクやビロードを思わせる柔らかな質感の
フレームをベースにあしらわれたサンザシの花々。
小枝の先端に咲き誇る小さな花の集まりが丸くこんもりと描かれ、
手にした時の枝のしなりまでもが想像できます。

モチーフはゴールドのみで表現されています。
滑らかな金一色の重厚感を残しつつ、花や枝、葉が生み出す
とても自然な、しかし実は非常に巧みに計算された透かし部分が
軽やかさをも演出するという秀逸なデザイン。
立体感のある花と、繊細な枝のボリュームの対比もその演出に
一役買っています。

裏側を見ると、表と比べても遜色のないほど丁寧な植物の彫金が
施されています。
ペンダントヘッドとして着ける際にはブローチ針の留め具が
内側に倒れ、針自体もくるくると回すネジ式で取り外しが可能です。
モチーフ下部のパーツは、おそらくブローチとして使用する場合、
ペンダントチェーンを引っ掛け収納するためのものではないでしょうか。
ここまで細やかな配慮のなされた作品もなかなか見かけません。

表側には"B" または "R" と読めるサインが入っています。
職人、あるいは工房の名を示し世に出すに相応しい出来栄えの作品と
いえるでしょう。

フランスのゴールドを示す鷲の頭の刻印が確認できます。

年代　　1900年頃
国　　　フランス
素材　　18金
サイズ　約4cm×3.2cm

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