アンティーク シルバー エナメル ラピスラズリ スカラベ ブローチ

1920年代、古代エジプトの装飾品に影響を受け製作された
エジプシャンリバイバルのブローチです。

中央にスカラベ、左右に翼を配したデザインは、ミイラに置く護符を
模したものだと考えられます。
スカラベ(フンコロガシ)は糞を転がす様が太陽を運んでいるように
見えることから、エジプトでは神ともされる重要な存在です。
そのスカラベを、暗藍色の、同じく古代エジプトで最も貴重な宝石の
一つであるラピスラズリで象っています。
ツタンカーメン王の胸を飾る有翼スカラベに使われている石も
ラピスラズリです。

大きく広げた翼は、形状からしておそらくスカラベのそれではなく、
古代エジプトで重要視されるハヤブサのものではないでしょうか。
明るいグリーン〜レッドのグラデーションを、エナメル細工で表現。
濃い黄緑色の部分は金属土台の上にエナメルを乗せ、羽の先端近くは
裏側に土台のない、ステンドグラスのように光を通すプリカジュール
技法で仕上げています。
二種を使い分けることで色と質感の違いを演出、またプリカジュール
ならではの色が溶け合うような独特の見え方も手伝って、その美しさと
華やかさに磨きがかかります。

そしてこのブローチの最もユニークな点は、針部分の刻印です。
マークは三種類、エジプトの都市カイロ、もしくはベニ・スエフを
示すタウンマークと銀の純度800を示すものが一つ。
エジプトのシルバーマークを示す猫が一つ。
年を示すアルファベットが一つ。
デートレターは1923年〜1924年の銀製品に打刻されるもの。これは
1922年、ツタンカーメン王の墓が発見された年の翌年から翌々年に
あたります。

ブローチの本体裏側にはもう一つ、数字「800」のみの刻印が
入っています。
この時代の、高度な技術を要するプリカジュールエナメルを施した
シルバー800のジュエリーといえば、一般的にヨーロッパ製と
考えられることが多いかと思います。
その中でここまでの高い完成度を誇るジュエリーにエジプトの、しかも
具体的な年まで示されたホールマークがあるというケースは
けして多くはないのではないでしょうか。

地金部分もエナメルもスカラベもすべてがエジプト製なのか。
エジプトのホールマークと、フランスの輸入品に打刻されるマークが
両方入っている同時代の他ジュエリーの例は、製造過程の
どこかからヨーロッパで手掛けられている可能性を示してはいないのか。
どこの国の職人によるものか?どこの国での販売を予定したものか?

多くの楽しい不確かな想像と共に、王墓発見直後の同じ国で、
熱狂の渦の中誕生した大変貴重な作品であるという確かな事実もまた、
私たちの胸を高鳴らせてくれるのです。

年代  1923年〜1924年
国   エジプト
素材  シルバー エナメル ラピスラズリ
サイズ  約7.1cm×2.6cm

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型番 gj21028
販売価格
359,000円(税込)
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