ヴィンテージのブローチです。
ウィーンで金の品位検査を受けたホールマークが確認できます。
可憐なスズランの花姿をロッククリスタル(水晶)で表現。
フロスト加工による白さと透明感のバランスが絶妙で、
凛とした雰囲気に大変よく合っています。
花はその一輪ずつが手彫りで象られたもの。
水晶のひと塊から一つの花を彫り出しているため、立体感、形、
大きさがそれぞれ異なります。
また釣鐘型というフォルムの特性上、底部は厚く、上部は薄く
仕上がります。
厚みの違いはそのまま色の見え方に直結し、より自然な濃淡の
表現を可能にしているのです。
花の中央には小さなシングルカットダイヤモンドをあしらっています。
石を支える地金が直角に曲がっているのは、ブローチ着用時に
その輝きを正面からとらえるため。
着けた時の美しさがジュエリーには必要なのだと、職人の
ちょっとした主張が感じられるような洒落た演出です。
葉にはネフライトジェイドを使用。
表面をそっとなぞると、凹凸の溝にまで指先がフィットするような
柔らかく、なめらかな感触が伝わります。
1950年代から1960年代頃、オーストリアでは半貴石で花を描く
同種の作品が製作されました。
おそらく戦後の経済復興の一環とし、古くから自国で栄えた
宝飾工芸分野に焦点を当てたものなのでしょう。
たとえばアールヌーヴォー期にも、オーストリアのジュエリーには
華美に走ることなく、あえて半貴石を用い芸術性を追求する
取り組みが見てとれます。
今作品全体に漂う、高い技術力あってこその自然な表現に
こだわる姿勢もまた、歴史を通し育まれたオーストリア独自の
感性だといえるのかもしれません。
オーストリアの18金を示すホールマーク、"A・J" のメーカーズマーク、
"750(18金)" の刻印。
花びらの縁に小さな欠けが見られますが、作品の完成度には
影響しない程度と考えます。
年代 1950年代頃
国 オーストリア
素材 ダイヤモンド ロッククリスタル ネフライト 18金
サイズ 4.8cm×2.3cm
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